
BiTAC®とは、「Bipolar of Tosoh and Chlorine Engineers」の頭文字を取った名称で、東ソーの複極式電解槽(TMB)とクロリンエンジニアズの単極式電解槽(CME)の実績をベースにTMBとCMEの長所を合わせ持つ新しい発想のもとで共同開発された複極式電解槽であり、業界の常識を破る高性能で、且つ安全で低コストの電解槽として内外の業界から注目をあびております。1991年に開発に着手、1992年のパイロット電槽による試験運転の成功を機に、1994年には韓国において第1号となる商業運転を開始、以来我が国を含め、既に10ヶ国以上25箇所以上で受注を受けており、国内外ソーダ電解プラントでは当社が電解槽技術の全面移管を受けた旭硝子を含めると40%のシェアを確保しております。外見は一般的な複極式電解槽と同じですが、その内部構造は従来の電解槽にない種々の工夫が施されています。BiTAC®では隔壁となるプレス加工された陽極側チタンパンと陰極側パンを特殊な溶接技術で接合しており、その他各種の工夫が低コストで高性能な電解槽の実現を可能としています。(図7)

エレメント内部では、陰極から隔壁を介して陽極へ向けて電流が流れます。このエレメントの電気抵抗は函体抵抗と呼ばれ、電力損失の一因になります。複極式電解槽ではチタン製の陽極室はニッケルの陰極室に比べて6倍もの比抵抗を有しますが、電流経路を短くするためチタンの陽極室と隔壁間の距離を狭めすぎると塩素ガスが陽極室内に滞留し、ガス抵抗が増えて電解電圧が上昇し、電気消費量が増えてしまいます。BiTAC®では図1に見られる通り、隔壁を波型形状にすることでチタンを流れる電流経路を短くし、なおかつ塩素ガスを排出するための十分な容積を確保しております。
この構造によって従来の電解槽よりはるかに低い電力原単位で運転することが可能になりました(図8)

業界の常識であった運転電流密度(kA/m2)3~4kA/m2を覆し、定格運転電流密度5kA/m2(最大6kA/m2以上)の高電密運転を可能としました。同じ電解液反応面積により多くの電流を流すことで反応面積あたりの生産量を増やし、よりコンパクトな電解プラントとして、初期投資金額を削減することを達成しております。共同開発会社の東ソー株式会社殿では6.5 kA/m2にて定格運転を実施しております。(図9)

イオン交換膜法食塩電解槽では高い性能を長期間にわたり維持するためには、エレメント各陽陰室内部の電解液の温度、濃度が均一に分散されることが重要です。 BiTAC®では、波型構造の隔壁の"山"と"谷"を交互に配置し、電解槽下部から供給された電解液は上昇の過程で"山"と"谷"の境目にて分離混合を繰り返し、電解面全面に均一に分散させています(図10)

当社の単極式電解槽CMEで実証されたこのシステムはBiTAC®においても採用されています。電解液がよりスムースに気液分離しノズルから排出されるさらなる工夫もなされています(図11)
陽極から流出する電流は、陽極室内の電解液(塩水)、イオン交換膜、陰極室の電解液(苛性)を経て、陰極に流入します。そのため陽極室内と陰極室内の電解液の電気抵抗によるIR損失が発生しますが、BiTAC®では陰極パンと陰極反応面となる陰極メッシュを接合する材料にスプリング効果を持たせたる加工を施してあり、陰極がイオン交換膜を傷つけることなく陽極と陰極の距離をほぼイオン交換膜の厚さまで近づけ、電解液による電気抵抗を削減することに成功しました。

当社の単極式電解槽CMEで実証されたこのシステムはBiTAC®においても採用されています。テフロンチューブをCMEより長くし、より観察し易くすると共に、電解液から漏洩する電流をさらに削減する工夫がなされています(図12,13)
エレメントの材質として陽極側にチタン、陰極側にニッケルを採用し、従来の電解槽よりもエレメントの長期寿命を実現しました。